製品の欠陥を見つけろ!ものづくりを縁の下で支える「CTスキャン」について詳しく聞いてきた

製品の欠陥を見つけろ!ものづくりを縁の下で支える「CTスキャン」について詳しく聞いてきた


皆さんは、自分が使っているスマートフォンが突然動かなくなったらどうしますか?

「友達と待ち合わせができない」「目的の場所までたどり着けない」など、きっとさまざまな問題が発生することでしょう。私たちは、普段使う製品がきちんと動くことを前提として生活していますが、その実現のためには、「製品の検証」という、ものづくりの担い手の苦労があるのです。

今回は、できあがった製品の欠陥の有無を、製品を壊したり分解したりすることなく検証できる優れもの、「CTスキャン」がものづくりにおいてどのような役割を果たしているのか、お話を伺いました。

インタビューにご協力いただいたのは、CTスキャンをはじめとした、X線装置などを製造・販売しているGEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ株式会社の小清水良多さん。普段は目に触れることのない、ものづくりの裏側の世界へ皆さんをご案内いたしましょう。

人間の身体を壊さずに検査。医療用CTスキャンの仕組みとは

―本日は「CTスキャンが、ものづくりの世界においてどのような役割を果たすか」を伺いたいと思います。私たち一般人からすると、「CTスキャン」と聞いても、「レントゲンを撮るためのもの」程度のイメージしかありません。CTスキャンがどのようなものなのか、教えていただきますか。

小清水:よろしくお願いします。CTスキャンは、人工的に作られた電磁波「X線」を使って、人間の身体を傷つけずに検査をするために、医療用として生まれました。X線にはものを透過する性質があります。通りやすさは物質の性質や厚さなどによってさまざま。厚みがあればあるほど、X線が通りにくくなります。X線が通りやすいものは黒く、通りにくいものは白く写るので、CTスキャンで写したものは、白黒で表示されるようになるんです。

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―性質や厚さですか。確かにレントゲンの写真を見ると、骨や臓器の部分は白く写り、他の部分は黒く写っていますもんね。そんなCTスキャンが、ものづくりの世界でも使われているという話を聞いたことがあるのですが、具体的にはどのような場面で使われているのでしょうか。

小清水:ものづくりの世界では、CTスキャンは主に製品の欠陥を見つけるために使われているんです。CTスキャンが導入される以前は、超音波やレントゲンなどを活用して欠陥がある場所を2次元的に表示させていたのですが、位置が分かっても、どの深さに欠陥があるのか分かりませんでした。それがCTスキャンを使うと、欠陥がある場所の深さまでピンポイントに特定できるのでとても便利。

CTスキャンのこうした特性に、自動車業界や電子基板を扱う業界が目をつけて、産業用として使われるようになりました。消費者の皆さんにCTスキャンをもうちょっと身近に感じていただくために、ここで例え話をしましょう。もし、いま手元にあるスマートフォンが使えなくなったら、どんな気持ちになりますか。

製品を安心して使えるように。産業用CTスキャンが果たす役割

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―困ります!「お金を払って買っているのに、なんで動かないんだ!」と怒るかもしれません(笑)。

小清水:そうですよね(笑)。では、自動車に乗っているときに、ブレーキが利かなくなったらどうしますか。

―そんなのダメです。命の危険が…!

小清水:そうなんですよ。今の質問でお分かりいただけたかと思いますが、製品を欠陥がある状態で世に出すということは、あってはいけないことなんです。欠陥がある製品が消費者の手に渡ってしまえば、製品が上手く動かずに使用者が不便さを感じたり、製品の種類によっては、身の危険を及ぼしたりする恐れだってあります。

大きな問題が起こる欠陥と聞くと、「簡単に発見できる大きな穴」のようなイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、製品にほんの小さな穴があるだけで、動かなくなってしまうことがあるんです。ですから製造業に携わる人にとって、できあがった製品に欠陥がないか「検証」することが重要になります。

―なるほど…!私たちが普段使う製品は「ちゃんと使えるのが当たり前」だと思っていたので、欠陥の有無を検証する大切さを初めて知った気がします。具体的には、CTスキャンを使ってどのように製品の検証をしていくのでしょうか。

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小清水:X線を出す発生機と、X線を受ける検出機の間に製品を置き、撮影をします。製品の角度をちょっとずつ変えながら何枚も撮影を行うことによって2次元のデータを取得し、それを3次元に変換する作業を行います。そして、最初に設定しておいた欠陥の基準(穴の大きさなど)を満たすものが欠陥として表示されるような仕組みになっています。上の写真にある、自動車用高圧ポンプのブラケットを試しにスキャンしてみましょう。

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小清水:欠陥の検証を行った結果が、こちらです。右下の図にある青い点が欠陥。上方向や横方向など、製品をさまざまな角度から表示させることで、欠陥がある場所が視覚的に一目で分かるようになっています。

検証するものに応じて、CTスキャンの大きさは異なります。X線を外に漏らさないために、検証する対象製品と比較して、かなり大きなCTスキャンを使わなければいけません。最も大きなCTスキャンだと、なんと車1台分の大きさになるんですよ。

IoTの普及により、今後さらにCTスキャンが必要とされる時代が

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―産業界でもCTスキャンは偉大な役割を果たしていたんですね。これだけ視覚的に欠陥が分かったら、製品の質の改善にものすごく役立ちそうです。CTスキャンによる検査の未来について、最後に聞かせてください。

小清水:検査の手段としてのCTスキャンの需要は、年々高まっています。自動車業界を例にとると、時代とともに、より軽くて丈夫な製品が求められるようになっているのですが、そうした製品を実現させるためには、どうしても構造を複雑にする必要があります。製品が複雑になればなるほど、欠陥は発見しにくくなりますし、製品を壊したり分解したりせずに検査したいというニーズも高まってきているんです。

そういった場面で活躍するのがCTスキャン。
CTスキャン自体の機能も日進月歩で向上し、現在では15秒ほどでスキャンが完了するものまで登場しています。

IoTの普及により、今後さまざまなものとインターネットが結びつくようになれば、製品の構造はますます複雑化していきます。CTスキャンの検査精度・スピードを向上させることによって、ものづくり業界における変化のスピードを加速させる一翼を担うことができるのではないかと思っております。

【編集後記】CTスキャンは、ものづくりの発展を陰で支える立役者

ものづくりの世界で注目されがちなのは、「製造」の工程です。

しかし、製品に欠陥がないかを確認する「検証」作業がしっかりとなされるからこそ、私たちは安心して製品を使うことができています。そして、製品の検証に使われるCTスキャンは、 高い検証スピードと精度によって、ものづくりを前へと前進させているのです。

IoTが加速する現代において、CTスキャンの必要性はますます高まり、今後私たちのまだ見ぬ製品の誕生を加速させることでしょう。

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小清水良多
GEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ株式会社
非破壊検査機器営業本部
フィールドアプリケーションエンジニア

【イベント情報】
産業用CTスキャンの活用セミナー
日時:10月28日(金)14:30~17:30(懇親会:18:00~20:00)
登壇:Ralf Lehmann氏(GE Oil & Gas)、鈴木浩之氏(株式会社JMC)
料金:無料
定員:100名
問い合わせ:045-477-5757 or jmcltd@jmc-rp.co.jp
URL:http://www.jmc-rp.co.jp/email/ge_jmc/
※定員が埋まり次第締め切り

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