フィリップ・スタルクが生み出す造形美。プロダクトに込められた一流デザイナーの想いとは

フィリップ・スタルクが生み出す造形美。プロダクトに込められた一流デザイナーの想いとは


普段とは違うデザインのペンに買い換えたら、書き心地が格段によくなった。
あなたにもこんな経験があるかもしれません。

書く、という機能こそ共通ながら、形状の違いによって使用感が大きく異なる。つまり、ものの価値が大きく変容する。ここには、デザインという行為の大きな力が隠されています。

デザインとは、ただ事物をクールに装飾するだけの行為ではありません。使用者を、使用目的を考え、そこにフィットする意匠を生み出す。このような、形状の先にある、デザインの本質的な価値を追求し続けるデザイナーがいます。彼の名はフィリップ・スタルク。

洗練と利便性が極限のレベルで同居するプロダクトを次々と世に送り、世界中から注目を集める彼のデザイン哲学と、その代表作をご紹介しましょう。

フィリップ・スタルクって誰?

I like to open the doors of human brain. #philippestarck#design#french#architecture

design tribuneさん(@designtribunemag)が投稿した写真 –

1949年フランス・パリ出身のフィリップ・スタルクは、インテリアデザイナーとして、数限りない名声をその手にしてきました。「名前を聞くのは初めてだ」という方が多いかもしれませが、まずはこちらの写真をご覧ください。

Mさん(@mckymd)が投稿した写真

東京スカイツリーの横で一際存在感を放つ金色のオブジェ。名前は知らずとも、見覚えのある方が多いのではないかと思います。そう、”フラムドール”と呼ばれるこのオブジェのデザインを手がけたのが、他でもないフィリップ・スタルクなのです。

彼はパリの装飾美術学校を卒業後、企業の家具デザイン担当を経て、30歳のときにアメリカでスタルク・プロダクト社を設立。建築・インテリア・家具・食器・出版物など、多様な分野に渡るデザインを手掛けることから、”総合デザイナー”とも呼ばれ、彼が生み出すプロダクトは多くの人々から愛されています。

「使う人のことを徹底的に考える」彼の”デザイン哲学”とは

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彼のものづくりにおけるコンセプトは大きく分けて2つあります。一つ目は”実用性”二つ目は”ミニマリズム”です。

一つ目の”実用性”について。彼は出来上がったプロダクトそのものではなく、それがもたらす 意味(=機能)が重要だという考えを持っています。彼は歯ブラシを例に、自身の哲学をこう語ります。

「歯ブラシを手にしても、歯ブラシのことなんて考えませんよね。僕なら、”どれだけよく磨けるだろう”と考える。口の中での歯ブラシの働きを理解するためには、”この口は誰の口だろう”と必ず思い浮かべる。そして、”その人は人生はどんなだろう”、”どんな社会を生きているのだろう”と思いを巡らせていく。こうしたプロセスを経てものを作っていくことが”デザイン”なのだと思います。」引用:TED「フィリップ=スタルクがデザインを熟考する」

ものが果たす役割や、ものを使う人のことを徹底的に考える。
こうした思考の繰り返しによって、素晴らしいプロダクトは生み出されているのです。

二つ目の”ミニマリズム”について。
現在ではミニマリズムという言葉に多数の解釈が存在しますが、彼の言うミニマリズムとは、”必要最小限を目指す手法”のこと。

彼がミニマリズムを提唱し始めた80年代当時、イタリアを中心としたデザインの流行は、消費者を置き去りにした”デザインのためのデザイン”でした。人々の生活からかけ離れたプロダクトが目立つ中、 彼が作る”無駄な装飾を省いたシンプルなデザイン”は、世界中の人々の心を掴んで離さなかったのです。

フィリップ・スタルクが手掛けた主な作品

フィリップ・スタルクのデザイン哲学が、彼の作品にどのように反映されているのでしょうか。ここからは、フィリップ・スタルクが手掛ける代表的な作品を見ていきましょう。

レモン搾り器(Juicy Salif)

Juicy Salif by Philippe Starck 👏🏻🍊

Willem-Aart van Dorpenさん(@vandorpen)が投稿した写真 –


フィリップ・スタルクの代名詞と言われているのが、この”Juicy Salif”というレモン搾り器。

彼がこの意匠のインスピレーションを得たのは、家族との食事中のこと。イカ料理にレモンを絞っている様子を見た彼は、まさにイカのような形状をしたレモン搾り器の着想を得たのです。

上部にレモンなどを当てて搾ると、搾り汁は縦に何本も入れられた溝を伝い、三つ足の下に置いたグラスにどんどん滴っていきます。シンプルで美しいフォルムは芸術的にも高く評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)では永久コレクションにも認定されている、まさに傑作です。

デザインのみならず、この”Juicy Salif”は、レモンの搾り汁を入れたい容器に直接入れることができるので、機能性にも優れていると言うことができます。

1990年に誕生したこの商品は、昨年2015年に発売から25周年を迎え、同年4月に開催されたミラノ・サローネ国際家具見本市で特別展示が行われました。タイトルは、そのデザインの美しさゆえにレモンを絞れない、という意味を込めて、「Twenty-Five Years Without Squeezing a Lemon(レモンを絞ることなく25年)」と題されました。

椅子(COSTES)

1982年、パリの老舗カフェ”カフェ・コスト”のためにデザインされたのが、この”COSTES”です。

特徴はなんといっても、3本になっている脚。これは、ウェイターが出来上がった料理や飲み物を運ぶときに、足を引っかけないようにという配慮から生まれたデザインなのです。また、曲線を描いたフォルムは、見た目の美しさだけでなく、腕を自然に広げやすい作りになっています。

デザインの力で、費用をそこまでかけることなく豪華なカフェを作ることができることを証明した”COSTES”

彼がデザインしたこの椅子は、当時フランス大統領であったミッテラン氏の目にとまり、若干18歳にしてパリに事務所を設立するなど、フィリップ・スタルクを現在の地位にまで押し上げるきっかけとなりました。

水栓(Axor Starck V)


フィリップ・スタルクが1901年創業のドイツの老舗水栓金具メーカー、ハンスグローエ社のAxor(アクサー)と共同で開発したのが、この ”Axor Starck V(アクサー スタルク V)”。自然の力強さをテーマに作られています。

まず目を引くのはクリスタルガラスが使われた透明なボディ。これにより、水が渦を巻いて湧き上がってくる様子を見ることができます。水栓本来の機能を上手くデザインに取り入れています。

また、デザイン面だけでなく機能にもこだわりが。
ガラスの本体部分が”はめ込み式”になっているので、取り外して洗うことができます。また、水を出すときのハンドルが左右どちらにも取り付けることができるので、左利きの人でも容易に使いこなすことができます。

このように、使う人のことを考えた工夫が随所に盛り込まれているのが、彼の手掛けるプロダクトの特徴です。

照明(CHAPO)

FLOS USAさん(@flos_usa)が投稿した写真


1962年にイタリアで設立された老舗ブランドFLOSとコラボしたのが、この ”CHAPO”

フランス語で帽子を意味する”chapeau(シャポー)”に由来する名前にもあるように、照明本体に帽子をかぶせることによって、様々なスタイルを楽しむことができるよう、設計されています。

特筆すべきは、そのコンパクトさ。幅はわずか11cm程なので、狭いスペースでも利用することができます。

「照明に帽子をかけて、燃えたりしないの?」と思う方もいるかもしれません。電球には発熱を抑える最新式のLEDが使われているため、熱で帽子を痛めてしまう心配がないのです。

わずかなスペースで、電球という本来の機能だけでなく、”空間をデザインする”インテリア的役割も果たしてしまう。CHAPOは、”実用性”と”ミニマリズム”という二つのコンセプトを同時に体現した、極上のプロダクトだと言うことができるでしょう。

フィリップ・スタルクが”プロダクトで語る”ものづくりの本質

このように、フィリップ・スタルクの”実用性”と”ミニマリズム”を意識したデザイン哲学は、彼の生み出すプロダクトに色濃く反映されていることが分かります。

そこから導き出されるものづくりの本質は、”使う人のためのデザイン”

”デザインの流行”は時代ととも変化しますが、”プロダクトは人が使うために存在する”という本質は普遍的なもの。使う人のことを考えに考え抜いて生み出されたプロダクトは、いつの時代においても、私達に変わらぬ価値を提供してくれるのです。

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