塗装?着色?それともカラー印刷?3Dプリンターで作られる造形物の着色法

塗装?着色?それともカラー印刷?3Dプリンターで作られる造形物の着色法


部品を作り、組み立て、色を塗る。
ものづくりにおける仕上げの工程、それは “色を塗る”作業です。

造形物は、色を塗ることによって“製品”としての輝きを増し、私達はデザインを楽しむことができるようになるのです。それは3Dプリンターによるものづくりも同様。今回は、3Dプリンターによって出力された造形物の着色方法、そして急速な広まりを見せるカラーの3Dプリンターについて紹介していきます。

カラーの造形物にする方法は大きく分けると3種類!

3Dプリンターを使って最終的にカラーの造形物を作るには、次の3つの方法があります。

1.塗装
2.染色
3.カラーの3Dプリンターを使って出力

私達は造形物の用途や目的に応じて、この3つの方法を使い分けることができるのです。それぞれどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。

好きな色を複数塗りたいときにおすすめな「塗装」

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最初に紹介するのは“塗装”です。
塗装とは、スプレーや筆をを使ってプラモデルに着色することと全く同じです。

2T1A9551-3e出典:株式会社JMC

塗装を選ぶ最大のメリットは、出力された造形物に複数の色をつけたり、塗料を混ぜて好きな色をつけられること。塗装工程の前に、表面を鏡面状態になるように磨いたり、シボ調(梨地調)にしたりと、質感の調整も行うことができるのです。上の写真のペンギンは、磨いた後にメッキ塗装をすることによって、独特の光沢が出ています。

色や質感を思い通りに調節しやすいため、実物に近い形に似せて作られたモックアップを展示し、外部の人に見てもらうときなどに使われています。

他の試作品との見分けをつけるのに便利な「染色」

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造形物を染料に浸して着色する方法を “染色”といいます。染色の長所は大きく分けると2つあります。

1つ目は、「着色の前後で大きさが変わらない」点です。
先ほど紹介した“塗装”を行うと、塗料の分だけ造形物が厚くなり、出力する際はあらかじめ分厚くなる分を計算して設計する必要があります。一方で、染色の場合は、染色前と染色後で厚さがほとんど変わらないため、分厚くなる分の計算をしなくていいのです。

IMG_2417e3出典:株式会社JMC

2つ目は、「どんなに複雑な形をしていても、まんべんなく着色できる」点です。上のシーサーの写真をご覧ください。凹凸がこれだけあっても、着色にムラがありません。塗装は造形物に色を噴出して着色していくので、複雑なものになると着色できない箇所が出てくることがあります。しかし染色は、染色液の中に造形物を浸すので、塗り残しがなく、綺麗に着色できます。

しかしこうした長所がある一方で、細かい色の設定ができないという短所があります。そのため、お金をかけずに着色したいときや、他の試作品との見分けをつけるために色分けしたいときに使われています。

このように、“塗装”と“染色”は造形物の用途に応じて使い分けられているのです。

「カラーの3Dプリンター」は、色情報を付加した3Dデータをもとに忠実に色を再現できる!

最後に紹介するのは、「カラーの3Dプリンターを使って出力」する方法です。

カラーの3Dプリンターの仕組みは、私達が普段使っている、紙のカラープリンターと非常によく似ています。シアン(青)、マゼンタ(赤)、イエロー、カーキ(黒)の4色がインクヘッドに装備されており、色情報を付加した3Dデータをもとに造形物を出力していくのです。

上の写真は、2016年6月にストラタシス・ジャパンが販売を開始した「Stratasys J750」という商品。なんと36万色以上のカラーバリエーションを出力でき、硬質から軟質、不透明から透明まで、幅広い質感を表現することができます。

klix3D.comさん(@klix3d)が投稿した写真

実際に「Stratasys J750」を使って作ったシューズがこちら。緑を基調としていますが、場所によってわずかなトーンの違いを表現することができています。こうしたプリンターの登場によって、微妙な色合いを忠実に表現できるようになるだけでなく、製造プロセスにおいて色を塗る工程が短縮されることから、プロダクトの製造スピードの上昇が期待されています。

カラーの3Dプリンティングサービスが、アートの分野を後押し

造形物に色をつけることができるようになったことで、3Dプリンターによって出来上がるカラーの造形物は、試作品にとどまらず、最終製品としても活用できるようになりつつあります。次の写真をご覧ください。

金色に輝く美しいプロダクトを作ったのは、日本でも展開されている、ベルギー発の 「i.materialise」と呼ばれる3Dプリンティングサービスです。(「i.materialise」についての過去記事はこちら

20種類以上の出力素材(なんと金属も!)と、100種類以上の色から、自由に自分の作りたいものをデザインして注文できるサービスを行っています。このサービスを利用して、デザイナーがプロダクトを作っている例もあります。下の動画をご覧ください。

作品のタイトルは 「Got M」。こちらの作品は、スイス在住の2人組のデザイナー、デールザックとスーキーによって作られました。動画の前半を見ても、色のついた透明な板がただ並んでいるようにしか見えません。それが、映像を先に進めていくとどうでしょう。

5色の板を重ねて牛乳を注いで、光を当てると…
見る見るうちに絵が浮かび上がって次々に変化していきます。この作品にはシャドー・キャスティング・パネルと呼ばれる技術が使われており、光の当たる角度や影の変化を利用して、ひとつの物体から複数の像を生み出しているのです。

3Dプリンターによって色付きの素材出力が可能になったことを利用して、アートの可能性が広がりつつあるのです。

色彩が3Dプリンターの可能性を拡大する

3Dプリンターによってカラーの造形物を作り出すことができるようになったことで、ものづくりの世界は大きく成長しています。

工業用の製品については、3Dプリンターで作るものは強度への懸念があり、最終製品として使われることにはまだまだ賛否両論あるのが現状。しかし、前の章で紹介したようなアート分野や、個人で楽しむアクセサリーなど、高強度が必須ではないないものづくりの領域においては、着色によって、生産手段としての完成度が大きく高まっているのです。

今後3Dプリンターの素材の強度が向上すれば、身の回りのあらゆるプロダクトが3Dプリンターによって作られることも夢ではありません。

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