日本各地にものづくりの場。続々と登場する「ファブ施設」とは

日本各地にものづくりの場。続々と登場する「ファブ施設」とは


いま、日本各地に誰でも利用できる、ものづくりに特化したコワーキングスペース、通称「ファブ施設」が続々と誕生しています。

こうした施設では3Dプリンターやレーザーカッターなど、個人では使用が難しい設備がシェアされており、個人レベルまで含めた日本のものづくりの活性化が期待されています。そして、ファブ施設はただの設備の切り売りスペースという以上の意味合いを備えている場合もあります。施設によっては、学童保育と一体していたり、120年以上前の酒蔵を移築再生した建物で運営されていたりするなど、運営者の様々な想いがそのバックグラウンドにあることが少なくないのです。

今回は日本各地の4つのファブ施設の運営者の方に、メールインタビューで、設立経緯、そしてその施設ならではの取り組みについて伺いました。

 

1. 刺繍など女性に人気のものづくりが豊富。名古屋「cre8 BASE KANAYAMA」


名古屋のハブである「金山駅」から徒歩30秒の場所に位置に拠点を構えるcre8 BASE KANAYAMA(クリエイトベース カナヤマ)。圧倒的なアクセス性を誇る同施設ですが、この地を選んだ理由、そして設立背景を運営者の吉住さんはこう綴ります。

吉住:cre8 BASE KANAYAMAができる前、名古屋の近隣には、ものづくりできる施設がありませんでした。そこで「ものづくり」を楽しむ人々と、広くコミットできる場を探していた名古屋の若手経営者達が手を挙げ、「すべての人にモノづくりの喜びを」というコンセプトのもと自ら設立しました。
 
同施設のwebサイトを見てみると、利用可能機器には3Dプリンターなど、最新のものが並びますが、その中に一際目をひく「刺しゅう機」の文字が。こうした個性的な機器を導入する背景には、利用者の方への想いがあるそうです。

吉住:利用される方は、オリジナル作品をつくられているクリエイターの方、製作物を販売されている企業の方、イベント前の学生さんや検討試作を製作する機械メーカーさんなど多くいらっしゃいます。すでに利用される方々のニーズを満たす設備だけではなく、女性に気軽に楽しんでいただくために2次元データや手書きのデータなどからものづくりができるものをそろえているのも特徴です。具体的には刺繍や紙プリントなどができる機材が多いです。

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また、ものづくりを刺激するだけでなく、コミュニケーションを生み出す工夫も同施設には盛り込まれているのだそう。

吉住:「cre8の日」という8日に行うイベントや、「ドローンと人間が戦うアミューズメントスタートアップ企画」、美術館とのコラボ展示企画など開催しています。これらは初めて会うクリエイターさんや学生さんなどが協力してつくってくださっていて、イベントを通してまだものづくりに馴染みのない人たちが触れ合う機会をつくっています。また、cre8 BASE KANAYAMAでは、できるだけお客様同士で会話が起きるように心がけています。機材を使うまでの順番待ちでさえも積極的にコミュニケーションをとることで、新しいものづくりのアイディアや出会いが生まれる時間だと考えています。

 
機材、技術をシェアしあうだけでなく、そこにいる時間も、利用者同士でシェアする。シェア意識が高まり続ける現在を象徴するかのような施設であることがうかがえます。

 

名称:cre8 BASE KANAYAMA
公式ホームページ:cre8.nagoya
住所:〒460-0022 愛知県名古屋市中区金山一丁目14番16号 トキワビル4F
TEL:052-331-1382

 

2. 120年以上前の酒蔵を移築再生。「ファボラボ鎌倉」

2010年、国内外のファブラボとものづくり活動をつなぐネットワークである「FabLab Japan Network」が、有志で立ち上がりました。東アジア初のファブラボを立ち上げるにあたり、白羽の矢が立ったのが鎌倉でした。「鎌倉にファブラボを立ち上げたい」というネットワークの期待に応え、ファブラボ鎌倉を立ち上がったのが、同施設代表の渡辺さんでした。

渡辺:世界的にみて魅力的な場所に、世界で認められるような魅力ある場所にしたい、さらには日本らしい魅力を再発見したいという思いから、ファブラボ鎌倉を立ち上げました。

 

現在、ものづくりが好きな人から馴染みのある言葉になっている「ファブラボ」。そもそもこの名称を用いるには一定の条件を満たす必要があるそうです。

渡辺:利用許可を出すような認証システムは今のところ無いのですが「ファブラボ」の名称をつかうことができる条件がいくつかあります。例えば、一般市民に開かれた施設であること、共通の推奨機械を備えていること、国際規模のネットワークに参加していること等です。「ファブラボ」はデジタルからアナログまでの多様な工作機械を備えた市民工房のネットワークを示す言葉です。「自分たちが使うものを、使う人自身がつくる文化」を醸成することを目指しています。

 

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東アジア発のファブラボ設立に地として選ばれた鎌倉。それだけに、同施設は日本的な文化を発信するべく、建物にこだわります。またFabLab Japan Networkであることを活かし、ものづくりをただの趣味ではなく次のライフステージへとつづくスキルを身に着けるための”スクーリングプログラム”を行っています。

渡辺:ファブラボ鎌倉が入居する建物は、120年以上前につくられた元酒蔵を鎌倉に移築してきたものです。建物内部は3分割され、壱号室がファブラボ鎌倉になっています。FAB基礎講座という、デジタル工作機械を活用していくために、データづくりからプログラミングや電子工作など、アイデアをカタチにするスキルを身につけていく3か月のプログラムがあります。更に高レベルなもので、毎年世界各国のファブラボから200名程度の学生が参加し、3Dモデリングから回路設計、プログラミング、機構設計など、モノを作るためのあらゆる技法を学ぶFab Academyに挑戦する方も出始めています。

 

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その本格的な内容は、ものづくりのプレイヤーを育成したいという、施設の想いをつよく感じさせます。最後に、ファブラボ鎌倉の運営で心がけていることを伺いました。

渡辺:運営で心がけていることは3つあります。
1つ目は、お互いを承認し合うこと。
2つ目は、ラボの整理整頓を皆で行うこと。
3つ目は、名前のない領域に名前をつけていくこと。

そうした心がけから、多用な専門スキルを持つ人と、ものづくりを楽しみたい人をつなげていき、新たなものづくりコミュニティを生み出していきたいと考えています。曜日によってラボの特徴が異なりますが、世代や分野を超えて、より深く学びたい方が多く集っています。エンジニアやデザイナー、歯医者さんや主婦、リタイアされた方、中高生や教員、そして企業や行政の方々など、どんどんものづくりの輪を広げていきたいと考えています。

 

名称:ファボラボ鎌倉
公式ホームページ:fablabkamakura.co
住所:〒248-0011鎌倉市扇ガ谷1-10-6結の蔵 壱号室

 

3. 商店街の空き店舗を改装、親しみやすさを重視。「ファブラボ山口」

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続いて紹介するファボラボ山口は、上のファブラボ鎌倉と同じくFabLab Japan Networkが設立した施設です。設立の経緯を運営の田吹東悠さんはこう教えてくれました。

田吹:山口市が2013年にファブラボ鎌倉にファブ施設の立ち上げを相談したことがきっかけです。2015年2月~3月に24日間の「期間限定ファブラボ山口」が立ち上がりました。その後、山口市から委託を受けて、地元業者の株式会社アワセルブスが運営を引き継ぎ、同年9月にFabLab Japan Networkに加入、「ファブラボ山口」として正式オープンしました。山口市の事業としては2016年3月をもって終了し、4月からは自社事業として運営しています。

 

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ファブラボ山口の特色は他のファブ施設同様、高いシェアマインドにあるといいます。施設の立ち上げのプロセスも、こうしたマインドの醸成に一役買ったと田吹さんは続けます。

田吹:山口市中心商店街のアーケードの中にある、元薬局を改装して使っています。商店街は地域の中心であり、人通りの多い場所ですので「ここは何のお店ですか?」とお買い物中の方が入ってこられることも多いです。

また「“ほぼあらゆるものをつくる”ファブラボだから、ラボも自分たちで作ろう!」ということで、利用者さんと一緒に床貼りや天井塗りなど、セルフ・リノベーションに挑戦しました。この経験から「みんなでつくる、みんなの場所」という意識が利用者の方にも根付いているように感じます。

 

地域密着を地で行くファブラボ山口。同施設の利用者はもちろん、地域に住む人々ですが、そこに集う人々はとにかく幅が広いのだそう。

田吹:特に20~40代の、ものづくりが好きな男性が多く利用されています。ご自分の趣味や、身のまわりの「あったらいいな」というアイディアを形にしていて、そのスピード感は素晴らしいなと思います。常連の小・中学生は「ファブラボ山口のために何かしたい!」とファブラボのビジネス活用を考えてくれています。また、地域で子育て中のお母さんたちもお子さんと一緒にものづくりを楽しんでいます。

 

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ファブ施設の魅力は、ただものが形になるだけでなく、ものづくりを通して、そこに集う人々と交流が生まれ、知識や技術の循環が生まれるところにあると田吹さんは綴ります。そしてこの循環の促進にはこだわっているそうです。

田吹:私たちは、教えあい、学び合う「知が循環する」コミュニティを大切にしています。そのため各機材の可能性を探求する「機材ふれあいまつり」というイベントを開催し、いつも利用される方はもちろん、初めてラボに来られた方もフラットな立場で、技術や知識を高め合う機会をつくっています。

講座では毎回さまざまな年齢、職業の方にお集まりいただいていますが、パソコンのスキルやデジタル工作機械に対する理解度はバラバラです。講師は、あえて教えすぎず、受講生同士が「教えあい、学び合う」ことができるよう心がけています。

また、敷居の低い施設であることを大事にしています。例えば、3Dプリンターで作ったクッキー型でクッキーを焼くワークショップや、織り機からつくる機織りワークショップなど、生活に身近な題材で「こんなことができるよ、あなたもやってみませんか?」などと提案しています。

また「こんなラボにしたい」という明確な理想はなく、さまざまな人が集まって、手を動かして、語り合っているうちに、何かおもしろい“もの”や“こと”が生まれるんじゃないか?という可能性に期待しています。

 

名称:ファブラボ山口
公式ホームページ:fablabyamaguchi.com
住所:〒753-0087 山口県山口市米屋町2-4
TEL:083-902-5210

 

4.学童保育と一体型。福岡「TECH PARK」

最後に紹介するのは、福岡のTECH PARK。その特徴は、学童保育と一体化した施設であることですが、その設立経緯を同施設の赤星良輔さんはこう教えてくれます。

赤星:もともとIoTのプラットフォームを提供している株式会社グルーヴノーツが、大企業だけでなく様々なクリエイターの「ものづくりの場」として学童保育のファブ施設「TECH PARK」をオープンしました。手芸や木工などの趣味から、ハードウェアのプロトタイプまで様々な方がご利用いただけるようになっています。

学童保育と一体化したファブ施設というユニークな特性を持つTECH PARKですが、この点を活用し、保育のカリキュラムに”テクノロジーの使い方”といったメニューを取り入れています。そして、施設に揃う機器の充実ぶり、そして地域特性が色濃く表れているのも特色といいます。

赤星:趣味でものづくりをされている方から、クリエイターの方まで幅広く利用していただいています。法人契約のお客さまもいらっしゃって、新事業のプロトタイプ開発として使われています。また、ネットで販売されている作家さんなども利用して頂いています。福岡のクリエイターが多い地域性を生かして、様々な企業と一緒にイベントやワークショップなどを開催しています。レーザーカッター、3Dプリンタ等のデジタル工作機器から、丸鋸や旋盤などアナログな機器まで取り揃えています。

 

豊富な機器と、クリエイター。両者が出会うことで、施設から生み出されるもののバリエーションも、どんどん増えていっているのだそう。

赤星:2016年4月からのスタートなので、まだまだこれからですが、手芸や木工をはじめ、アクセサリーなどをつくる方がいらっしゃいます。また、ネットにつながるデバイスの試作なども行っているため、IoTのプロトタイピングに関する相談なども増えてきています。今後は、異なる分野のものづくりをされている方が交流できるような機会を増やしていきたいと考えています。ものづくりする人が主役になることと、自分が欲しいものを自分でつくる人を増えていってほしいですね。

 

名称:TECH PARK
公式ホームページ:techpark.jp
住所:〒810-0021福岡県福岡市中央区今泉1丁目19番22号西鉄天神CLASS 3F株式会社グルーヴノーツ内
TEL:092-982-0185

 

日本各地にあるファブ施設。身近なものから挑戦を

今回は地域にあるファブ施設を運営されている方に、施設のご紹介をしていただきました。どのファブ施設も、純粋に「ものづくりを楽しみたい」という想いが根本にあって設立され、初心者やプロで活躍している人などその利用者層も幅広いのも面白いところです。

ファブ施設増加の背景には、機器のシェアというマインドが広がりつつあることがうかがえます。そして施設内では、機器だけでなく、幅広い利用者による、知識と技術のシェアも起こりつつあります。いまの自分には作れなくても、誰かと”何か”をシェアしあえば作れるものがあるはずです。あなたと誰かのものづくりをアップデートするファブ施設。ぜひ覗いてみてください。

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