次世代の有名アーティスト集団。武蔵野美術大学2016年「卒展」へ行ってきた

次世代の有名アーティスト集団。武蔵野美術大学2016年「卒展」へ行ってきた


何かものをつくるのが好きな学生が集まる場所と言えば、「美大」!
そんな学生たちの話を伺うために、武蔵野美術大学の卒業・修了制作展へ見学に行ってきました。

武蔵野美術大学の卒業生を挙げると、イラストレーターでタレントのリリー・フランキーさん、アートディレクターの森本千絵さん、漫画家の辛酸なめ子さん……などなど。各方面で活躍されている有名人を多く輩出していることが分かります。

そんな偉大な卒業生に次ぐ逸材が在籍している、武蔵野美術大学の作品展が1月15日(金)~18日(月)の4日間、開催されました。

キャンパスのいたるところに作品が飾られていて、全体が大きな作品のように感じられました。
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造形研究科美術専攻彫刻コース大学院2年生の永井天陽さん。「もののあり方を問い直すこと」をテーマに作品づくりをされています。

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こちらの作品は、永井さんご自身がモデルです。

前髪の先端が茶色になっていますが、これは永井さんのお母様の髪の毛をくっつけたとのこと。ご自身の前髪に「異質」であるお母様の髪をつけることで、母の視点とにおいを自分に身に着けることとなり、「他者との距離」について考えた作品です。
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こちらは永井さんの「切歯」を再現した作品です。「切歯」とは、猿人時代の人類に生えていた歯で、現代人には退化してもう無いはずのものなのです。しかし100人に1人の割合で身体の正中線上の、上顎の中に残っている人がいるそうです。

永井さんは「自分の核の中に別のモノが存在していた」ということに衝撃を受け、取り出した切歯の形を再現されました。
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彫刻学科4年生のKILALA IRIYAMAさん。エネルギーが内側から放出されている様子を、作品で表現されています。日常と非日常を、素材で分けており、日常をイメージしたものは「」「」、非日常は「ブロンズ」。自分の好きなものや日常で気になった形をモチーフにしてつくられたそうです。

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こちらのモニュメントは、三角形を組み合わせた形を模索しているときに3Dモデリングしたときに「ピン」ときた形だそうです。ブロンズで再現されていて、エネルギーを放出されるイメージでつくられました。実際に見ると圧巻の存在感です……!

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工芸工業デザイン専攻 インダストリアルデザインコース大学院2年生のキム ドンヒさん。きらきらしたガラスの素材に惹かれて、学部生のときからガラスを用いた作品作りをされてきたそうです。

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こちらは「時のはじまり」がテーマです。新学期が始まるときのウキウキや初々しさが表現されています。

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近くで見てみると、色付きの大きなガラスと、その周りに小さなガラスがあることに気が付きます。

大きなガラスの淡くて美しい色はご自身で着色されたとのこと。小さなガラスの部分は、ガラスの棒を輪切りにして敷き詰められたそうです。見た人を癒すような、優しい雰囲気の作品でした。

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工芸工業デザイン専攻 金工コース大学院2年生 佐々木原嶺紋さん。
兜(かぶと)を専門に制作しています。昔は頭を攻撃から守るために使われていた兜ですが、現代社会では必要が無くなりました。その代わりに「精神を守る」ことが必要になったのではないか、という想いから、この作品を見た人に、奮い立つような勇気を与えたいと思ったそうです。
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表面が鏡面になっているのは「周りと馴染む」ことを意味しています。そして表面をよく見てみると、叩いて成型されているのがわかります。それは「こうしたい」という自我を出しても叩かれ、周りと一緒になる……という、現代の悲しい傾向を表しているのです。

ただ、それでも前方にまだ突起が出ています。叩かれても叩かれても自我を出していく。そんな勇気をもらえる作品です。

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工芸工業デザイン専攻 インダストリアルデザインコース大学院2年生 オウティティさん。

中国の農村地区の「留守児童」のためにつくられたプロダクトです。「留守児童」とは、両親と一緒に住むことができない子供たちのことを言います。そんな子供たちを家事などの辛くて単調な作業から救うためにつくられたのがこの「人力洗濯遊具」です。
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下の黒く周りが覆われているのはバケツです。その部分に衣服・洗剤・水を入れて、手すりを持ってコロコロと足で転がすことで、楽しく洗濯ができます。しかも、現地の材料を使って自分でつくれるのがポイントです。

中国の社会問題になっている留守児童の心身ともに助けるためのプロダクトです。

次世代のアーティストの世界観

作品の1つ1つに合わせてライトアップした「教室」。教室全体、ひいてはキャンパス全体が1つの作品となっているようでした。

学生さんたちの、作品への熱い想いは短時間の取材ではとても聞き尽くせないものでした。そんな世界観を築き上げてきた学生さんのフィルターを通して見える世界は、どんなに豊かなものなのでしょう。羨ましさまで感じます。

ものづくりへのインスピレーション。そして、自分の感性を磨きに訪れるのにとても素晴らしい場所です。

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