Art&Betweens : ものづくり×大自然とエレガンス

Art&Betweens : ものづくり×大自然とエレガンス


アート専門の通訳・翻訳を行う活動団体「Art Translators Collective」のメンバーによるリレーコラム。さまざまな国や文化をまたいで活動してきた経験を活かし、グローバルな視点からものづくりの面白さをお伝えします。

Lyn & Tony(リン・アンド・トニー)はオーストラリア・シドニー在住のデュオ。オーストラリアの大自然をモチーフに、ジュエリー・インスタレーション・香り・写真表現と縦横無尽に大胆にメディウムをとびこえながら、ダイナミックかつエレガントな世界観をつくりだします。今年のヴェネチア・ビエンナーレにも参加したふたりへのインタビューを交えて、独自の世界観に迫ります。


オーストラリアの大自然

リン・アンド・トニーの特徴のひとつは、なんと言ってもその表現の縦横無尽さ。大自然にインスパイアされた大胆なジュエリーもあれば、キャンドルの香りが展示空間を演出したりもし、大自然のなかで撮影された写真作品の展示もありながら、エレガントなひとつの空間をつくりあげます。
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—あなた方の作品は、大胆でありながらエレガントであることが特徴のひとつに感じます。このふたつは自然に融合できるものですか?

わたしたちのものづくりへの取り組みは、「挑発」と「美しさ」の込み入った関係性に由来しています。自然の中にある素材や珍しい素材を用いるのが特に好きで、そういった素材を、鑑賞者や着用者が親しみやすいストーリーへと転換させて作品づくりを進めます。ストーリーに仕立てる上では必ず「ひねり」をいれて、予期し得ない要素を入れていることもポイントです。相反する要素を共存させることで、ものづくりに対し、新たな見解や視点を展開できるのではないかと思っています。

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—特に創造力を掻き立てられる素材はありますか? 天然石とレザーとでは、作品づくりのアプローチが変化したりしますか?

「素材」はいつもわたしたちにとって、とびきり素敵なインスピレーション源です。予想できないものほど私たちをときめかせます。天然石は、そのどれもが地面のなかから出てきたという事実から私たちを心底魅了させますし、(エシカル及び持続性の観点からも正しく入手した)カンガルー・レザーは世界から無駄になるものを無くそうする私たちのエシカルな視点からの貢献活動でもあります。
オーストラリア人の採掘者と共に作業をして、作品づくりに使用する天然石を掘り出して磨き上げてもらいますが、そのように1点1点異なる特別な天然石をものづくりに活かせることを本当に光栄に感じます。すべての素材はそれぞれに特別の価値を持ち、1点ずつそれぞれに特有の輝き方を示してくれるのです。

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—ジュエリーや、香りや、インスタレーション…様々な表現をひとつの展示空間に示すことに、難しさを感じますか、それともそれは自然にできるものなのでしょうか?

わたしたちは自分たちの世界を表現しているだけです。日々すばらしい技術や素材やコンセプトに囲まれて過ごしていて、物理的な展示空間というのはそのような旅の一端に過ぎません。いわば、つくりだす「もの」の形に関係無く、私たちはただ自分たちの世界を表現しているだけであるとも言えるのです。

私たちは、自らの居場所の経験を作品に落とし込んでいます。いま現在の時間と場所(2016年現在のオーストラリア)を表現していて、それは私たちがこれまでに過ごした全ての過去を反映させたものであるとも言えるでしょう。つまり、日々自分たちの視覚表現に足し得るものごとを学んでいるのであり、日々更新された新た表現を紡ぎだしているのです。

デュオである私たち二人とも、新しいことに挑戦し続けたいという強い思いがあります。手にした素材をいかに未知数の扱い方をするかに思考を巡らせます。燃やしたり、香りをつけたり、編んだり..。素材を基点に不思議さを集めた私たちならではの世界を築き上げています。

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—オーストラリアの大自然のどのような部分に魅力を感じますか?

わたしたちはオーストラリアの牧歌的なバイロンベイで幼少期を過ごし、大自然のなかで伸び伸びと育ち、オーストラリアの自然を題材とする作品づくりはここを基点としています。

私たちが自然のなかで目にするすべてのものは環境が形をつくりあげたものです。なので、ある場所特有の香りを演出したいと思いますし、ある岩特有のテクスチャーを表現したいと思いますし、青々と茂った草原の中を走り抜けながらのびのびと育った芝が足元に触れるような感覚などを表したいと思っています。

オーストラリアの大自然の強烈な光の美しさも探り続けたい大好きな表現のひとつでありますし、木々や下生えの草木の濃厚で芳醇なテクスチャーもまさにオーストラリア特有ものであると思います。宇宙空間へと繋がるような透き通るほどの濃いコバルトブルーの空も、私たちを魅了するオーストラリアの自然の一側面です。幸運にも自分たちは経験しているからこそ、その唯一無二で秀逸な素晴らしさを熟知していて、それを人々に私たちの表現を通して伝えたいのです。

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—最後に。「香り」を表現に取り入れる際にときめいたこと、難しかったことはなんでしたか?

「時間や場所での経験」を表現するのに香りを用いることは、とてもワクワクする試みでした。最初に自分たちの最も好きな風景をふたつ選びました。そしてMaison BalzacのElise Pioch Balzacが、それぞれにあわせた香りをつくってくれたのです。

L’Etrangete (Strangeness) は、オーストラリアの熱帯雨林に降り注ぐ木漏れ陽をイメージしてつくられていて、オーストラリア由来の天然レモン銀梅花、麻、天然生姜などを原料に用いています。L’Obscurite (Darkness) は海岸沿いで太陽により温められた火山石をイメージした香りで、木の樹脂、樺の木の脂、オーストラリア香椿などが原料に用いられています。
ふたつの香りは相互的にも作用するようにつくられていて、合わさることでさらに複雑な3つめの香りを味わうこともできます。またオーストラリアの建築事務所、Aileen Sageといくつかプロジェクトを共にしてきています。
現在開催中のヴェネチアビエンナーレ・オーストラリア建築館で展示中のふたつの香りを巡る展示も、Aileen Sageと共に作り上げたものです。

■Lyn & Tony(公式ホームページ) http://lynandtony.com/
■2 by Lyn & Tony(ジュエリーライン) http://www.2lynandtony.com/

■第15回ヴェネチアビエンナーレ建築展・オーストラリア館
2016年5月28日~11月27日
http://www.labiennale.org/en/architecture/exhibition/national-participations/index.html
http://aileensage.com/#/the-pool/

河西香奈(かわにし・かな)
KANA KAWANISHI ART OFFICE/GALLERY代表。
2006年よりRizzoli New Yorkの東京コーディネーターとして書籍編集に携わり、アーティストマネジメント・編集事務所及び展覧会企画財団を経て、2014年に独立。
現代美術ギャラリー・ディレクターとしての視点を活かしながら、出版物の企画/編集、国内外の美術館・財団・招聘機関等の通訳や翻訳を行なう。

Art Translators Collective(アート・トランスレーターズ・コレクティブ)は、アート専門の通訳・翻訳およびそれに関連する企画の運営などを行う団体。
同時代を生きる当事者として表現者に寄り添い、単なる言葉の変換を超えた対話を実現していく翻訳・通訳を目指し活動している。
http://art-translators.com/

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